(農業経営支援ネットの広報チラシ)
農業経営支援ネット(集落営農組織の法人化支援団体)
① 農業経営支援ネットは、法人化手続きの専門家である行政書士等の
団体です。
② 農業経営支援ネットは、集落営農の法人化に必要な定款の作成から
登記及び財産の引継ぎまでの一連の事務をワンストップで支援すると
ともに、要請があれば地元説明会への講師派遣などを行います。
③ 農業経営支援ネットは、国、県、市町村、JA、農業会議などと連
携し、地域・集落の実情に沿った法人化の支援を行います。
④ 農業経営支援ネットの設立支援事務に係る報酬は、法人設立に要す
る経費が国の助成対象となっており、皆様の特別の負担は不要です。
⑤ 法人設立後も、要請があれば、継続して記帳・会計の支援をしま
す。
⑥ 業務上知りえた個人情報等の漏えいは、法律等で禁じられています
ので、厳正に秘密を遵守します。
(営農集落組織説明会資料)
集落営農組織の法人化について
1 任意組織(集落営農)から法人へ
集落営農組織が任意組織のままでは、法人格、経営体制、投資財源や雇用の確保等の面,
経営・地域農業の発展を図っていくうえでは限界です。集落の将来、後継者の育成等を考
えると法人化が必須となっています。
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任意組織(集落営農) |
法人 |
法人格 |
法人格なし ・任意作業はできても、農地利用の設定は不可能 ・安定雇用が困難 |
法人格あり ・農地利用権の設定が可能 ・青年就農者等の安定雇用が可能 |
経営判断できる体制 |
法律に基づかない、メンバーの合意による役員体制 ・メンバーの総意によらなければ新たな経営判断は困難 ・役員はメンバー内から選ぶしかなく、高齢化が進行した場合に役員の選定困難 |
法律の基づく役員体制 ・役員の権限は明確で、経営発展・所得向上のための経営判断を役員が機動的に行うことが可能 ・役員に職員や外部の人材を登用可能、組織として継続 |
投資財源の確保 |
内部留保は不可、組織としての融資・出資は不可 ・将来の経営展開のための投資財源の確保不可 ・農業経営基盤強化準備金(税制特例)の利用不可 |
内部留保が可能、融資・出資を受けることが可能 ・将来の経営展開のための投資財源の確保可能 ・農業経営基盤強化準備金(税制特例)の利用可能 |
雇用の確保 |
困難 ・雇用保険、労災保険などの福利厚生はなく、青年の就職先としては不適切 |
可能 ・雇用保険、労災保険などの福利厚生が整い、青年の雇用が促進 |
2 株式会社と農事組合法人の対比
農業法人には、株式会社、持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)及び農事組合法
人の5つの形態があり、株式会社と農事組合法人が一般的です。これらの法人は、農地法
上の要件を備えれば農業経営のために所有権も含めた農地の権利を取得できる農地保有適 格法人(旧農業生産法人)になることができます。
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株式会社(会社法) |
農事組合法人(農業協同組合法) |
事業の目的 |
営利追求 |
共同利益の増進(農事組合法人から株式会社への組織変更可) |
事業の範囲 |
制限なし |
原則として農業(農産物加工・販売などの関連事業を含む。)に限定 |
構成員 |
制限なし(1人以上) |
・組合員:農民3人以上で構成、農協等法令で定める者も可能 |
役員 |
・取締役1人以上(必須・任期2年) ・監査役1人以上(任意・任期4年) |
・理事1人以上(必須・任期3年以内)理事は当該組合の組合員 ・監事1人以上(任意・任期3年以内)組合員以外も可 |
議決権 |
1株1議決権(出資額に応じた議決権) |
1人1議決権 |
労賃の支払い |
確定給与支給 |
従事分量配当又は確定給与支給 |
雇用者の範囲 |
制限なし |
組合員(家族含む)外の常時従事者が常時従事者の2/3以下 |
準備金の積立・配当 |
資本金の1/4に達するまで、減少する剰余金の額の1/10の額を積立 |
・出資の総額と同額に達するまで剰余金の1/10以上の金額を積立 ・配当の種類⇒出資配当、利用分量配当、従事分量配当 |
*農地所有適格法人(旧 農業生産法人)となるための要件 ・法人形態:農事組合法人、株式会社(非公開)、持分会社(合名会社、合資会社、合同会社) ・構成員 :農業常時従事者、農地を提供した個人、農地中間管理機構又は農地利用集積円滑化団体を通じて法人に農地を貸し付けている個人、地方公共団体、農協等農地保有合理化法人等のほか、農業関係者の議決権が、総議決権の1/2超 農業関係者以外の構成員の保有できる議決権は、総議決権の1/2未満等 ・役員 :過半が農業の常時従事者(原則年間150日以上)で、役員又は重要な使用人 (農場長等)のうち、1人以上が農作業に従事(〃60日以上) ・事業 :主たる事業が農業(直近3ヵ年の売上高の過半) |
3 農事組合法人の設立事務の流れ
農事組合法人の設立事務は、株式会社とほぼ同様ですが、定款の認証が不要であること
等一部相違も見られます。
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事項 |
事務 |
備考 |
発起人の行う設立事務 |
発起人会の開催(随時:発起人は3人以上の農民等) |
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基本的事項案の作成 |
① 組合の名称、事務所の場所(住所)、事業目的、事業年度の決定 ② 構成員(組合員)の決定、募集 ③ 出資制か非出資制かの決定、資本総額、出資1口の金額の決定 ④ 組合の機関、機構の決定 ⑤ 事業目論見書(事業計画書)の作成 ⑥ 給与制か従事分量配当制かの決定 等 |
普通発起人が即組合員となる |
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定款の作成 |
① 定款の作成、印刷 ② 組合員になろうとする者からの設立同意書、出資引受書のとりまとめ ③ 設立総会の開催、役員(理事、監事)の選任 |
*株式会社の場合、定款の認証が必要 |
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理事の行う設立事務 |
設立事務の引き渡し |
① 理事会を随時開催 ② 代表理事個人の印鑑証明書の用意 ③ 組合の代表者印等必要な印鑑を作成 |
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出資金の払込み |
出資金領収書発行 |
出資組合に限る |
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設立登記申請 |
設立登記関係書類の作成、法務局へ申請書提出 |
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登記完了から設立後の届出 |
① 登記簿謄本、印鑑証明書取得 ② 行政庁への設立の届出(都道府県知事) ③ 設立後の関係機関への各種届出:税務署、県税事務所、市町村、労働基準監督署、公共職業安定所、日本年金機構年金事務所等 |
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4 法人の税制のあらまし
法人には法人税、法人住民税等が課税されますが、法人でも税法上の協同組合等となれば税率が低く、従事分量配当の損金算入や消費税の課税仕入額への算入、農業経営基盤強化準備金の積立金の損金算入などにより、必ずしも高額の法人税納付にはなりません。なお、配当額が大きくなれば給与所得控除が有利な株式会社の給与制への移行も検討課題です。
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株式会社、確定給与を支給する農事組合法人 (普通法人) |
従事分量配当又は利用分量配当を行う農事組合法人 (協同組合等) |
法人税
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課税対象⇒各事業年度の所得 <資本金1億円以下の場合の税率> 所得が年800万円超の部分 25.5% 年800万円以下の部分19%(15%)
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<剰余金から配当> ・配当は、法人の所得の計算上損金に算入され、配当を受けた組合員には事業所得となる。 ・税率は、所得が年800万円超の部分 19% 年800万円以下の部分19%(15%) |
法人住民税 (地方税) |
<均等割> 都道府県民税2万円、市町村民税5~6万円 計約7万円 <法人税割>法人税額×都道府県民税5%、法人税額×市町村民税12.3% 計法人税額×17.3% |
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法人事業税 (県民税、他に地方法人特別税) |
所得が年800万円超の部分 5.3% 年400万超800万円以下の部分4.0% 年400万円以下の部分 2.7% |
所得が年400万円超の部分 3.6% 年400万以下の部分 2.7% *農業生産法人の場合、農業部分は非課税扱い(除く畜産) |
消費税
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・法人化して1,000万円超の課税売上高がある場合は、3年目から課税事業者 ・設立時に資本金又は出資金が1,000万円以上の場合は、初年度から課税事業者 <計算方法>納付額=(課税売上高×税率5、8%)-(課税仕入高×税率5、8%) <簡易課税制度による計算―課税売上高が5000万円以下の場合に選択可> 納付額=(課税売上高×税率5、8%)-(課税売上高×税率5、8%×みなし仕入率(70%))*農事組合法人で、従事分量配当方式の場合、配当額は課税仕入額に算入され、負担が軽減 |
5 農業経営基盤強化準備金
農業者が、経営所得安定対策などの交付金を農業経営改善計画などに従い、農業経営基盤強化準備金として積み立てた場合、その積立額を損金に算入することができます。さらに、農業経営改善計画などに従い、農業経営基盤強化準備金を用いて農用地や農業用機械等の固定資産を取得した場合、圧縮記帳を行うことができます。
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適用対象法人 |
対象交付金 |
特例の内容 |
特例の効果 |
農業経営基盤強化準備金制度 |
青色申告書を提出する法人で、 ① 農業経営改善計画の認定を受けた農業生産法人 ② 特定農用地利用規定に定める特定農業法人 |
・経営所得安定対策交付金 ・担い手への農地集積推進事業の交付金 ・環境保全型農業直接支援対策交付金 |
指定期間(平成19年4月1日~27年3月31日)において、交付を受けた交付金を農業経営改善計画などに従い農業経営強化準備金として積み立てた場合、そのうちの一定の金額の損金算入を認める制度 <損金算入限度額>いずれか少ない額 ① 積立時の農業所得額(準備金の積立予定額を除き仮計算した青色申告特別控除前の所得金額) ② 準備金積立予定額(農林水産大臣の証明額) |
この特例により、交付金に係る所得金額は損金算入額と相殺され、実質的に、準備金を取り崩す時まで課税の繰り延べ(最高5年)が可能となる |
農用地、 農業機械等を取得した場合の課税の特例 |
農業経営基盤強化準備金を有する法人 |
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農業経営改善計画などに従い、取り崩した準備金及びその年の交付金により、農用地又は農業用機械等の減価償却資産(特定農業用機械等)の取得等をして農業の用に供した場合、原則としてその事業年度の準備金の益金算入額に相当する範囲内で圧縮記帳を認める。 *圧縮記帳~取得した農用地等の帳簿価額を一定額まで減額し、その減額分を損金に算入すること
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この特例により、準備金を取り崩すとき、その圧縮限度に係る部分の金額は益金に算入されず、農用地等の取得価額を減少させる。 |
6 法人における社会保障制度のあらまし
法人における社会保険及び労働保険は次表のようになります。なお、農事組合法人で従
事分量配当を受ける組合員は、任意組織の時と同じ取り扱いとなります。
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制度 |
被保険者 |
保険者(窓口) |
給付事由 |
保険料等の算式 |
社会保険 |
健康保険 |
健康保険の適用事業所で働く人 |
全国健康保険組合、健康保険組合 (全国健康保険協会、年金事務所) |
業務外の病気・けが、お産、死亡 |
(一般保険料) =標準報酬月額×保険料率×12月÷2 (介護保険料) =標準報酬月額×保険料率×12月÷2 |
厚生年金保険 |
厚生年金保険の適用事業所で働く民間会社の勤労者 |
厚生労働省(日本年金機構年金事務所) |
老齢、障害、死亡 |
=標準報酬月額×保険料率×12月÷2 |
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労働保険 |
労災保険 |
原則としてすべての事業が適用を受け、そこに働くすべての労働者が給付の対象 |
厚生労働省(労働基準監督署) |
業務上・通勤途上の病気・けが、障害、死亡 |
=給与支給総額×保険料率(1.2%) |
雇用保険 |
原則としてすべての事業が適用を受け、その従業員が被保険者となる |
厚生労働省(公共職業安定所) |
失業、雇用の継続が困難となる事 |
=給与支給総額×保険料率 (本人0.6%、事業主0.95%) |
*<労災特別加入制度>労災保険は労働者を対象としたものですが、農業経営者等が加入
できる特別加入制度もあり、「中小事業主等」、「特定農作業従事者」、「指定農業
機械作業従事者」の3種類があります。加入事務はJAで行っています。
*<農業者年金制度>農業者は、国民年金の上乗せとして農業者年金に任意加入すること
ができます。加入要件は、①20歳~60歳、②国民年金第1号被保険者、③年間60日以上
の農業従事者です。法人化され厚生年金の被保険者となった場合は、農業者年金から脱
退します。
7 新たな法人への農業機械等の引き継ぎ
農業用機械・施設が、交付金を受けて取得したものである場合、交付金相当額が圧縮記帳されるため時価と譲渡時の簿価が一致せず、任意組織から新設法人に譲渡する場合に、任意組織の構成員に対する所得税、新設法人に対する法人税の負担が生じる場合があります。
機械・施設の譲渡価格 |
任意組織の構成員(所得税) |
新設法人(法人税) |
譲渡価格と時価が一致 |
課税なし |
課税なし |
譲渡価格と時価は一致するが、時価が簿価よりも高価格である場合 譲渡価格=時価 時価>簿価 |
課税 <計算例:800万円で譲渡した場合> 簿価400万円の機械を時価の800万円で譲渡したことから400万円の譲渡益発生 ⇒「構成員ごとの按分譲渡益-特別控除(50万円)」を、それぞれの構成員に課税 |
課税なし |
譲渡価格が時価よりも低価格で、譲渡価格が簿価と同額又は低価格である場合 譲渡価格<時価 譲渡価格=簿価 |
課税なし |
課税 <計算例:400万円で譲渡した場合> 時価800万円の機械を簿価の400万円で譲り受けたことから受贈益発生 ⇒「800万円-400万円」の受贈益に課税 |
<計算例の条件>1,000万円の農業機械を500万円の補助金を受けて導入
簿価(取得時500万円(圧縮記帳)、譲渡時400万円)、時価800万円
*補助事業により農業用機械等を導入している場合の補助金関係の手続き(補助金適化法)
⇒集落営農組合が任意組織の構成員や財産を引き継いで法人を設立し、補助事業
により取得した農業用機械・施設等を譲渡する場合には、事前に財産処分(承継)
の承認申請を行い、補助条件を承継すれば、補助金相当額の返還は必要ない。